金融危機後のドルと金の行方を予想する
この対談は08年9月、リーマンーショックのさなかに京都で開催された金に関する国際会議の際に収録したものだ。会議の主催はLBMA(ロンドン金地金協会)。世界から400名近くの市場関係者が集った。
登場する人物は、当時、欧米の金市場で最も売れっ子のコモディティー(商品)アナリスト。英フィナンシヤルータイムズ紙の金関連記事には常に彼のコメントが引用されていた。京都の会議でも満場一致でベストスピーカーに選ばれている。
その後、彼は有名なヘッジファンドにヘッドハントされた。ポールソンといえば、サブプライムに勝って一躍名を馳せたヘッジファンド。金融危機勃発を予測して住宅ローン担保債券や金融株を空売りし、他のファンドが惨惶たる状況のなかで36%ものリターンをたたき出している。
市場が注目したその人物の次の一手が何と金ETF。そして金鉱株を大量に買い込んだ。「米国は金融危機から脱出するために異常な量的緩和策を取ったが、その後遺症としてインフレが避けられない。そのヘッジとして金を戦略的に保有する」という。
その人物をヘッドハントしたのも、おそらくは金の参謀役を期待してのこと。しかし、そのリードがメディアに登場することは、今やほとんどない。その意味でこの対談もお宝原稿となった。
なお、改めてこの対談を読み、08年と現在を比べると、市場の基本的な部分はほとんど変わっていないことに驚く。米ドル、ユーロ、国際通貨制度などの問題が金価格を構造的に押し上げている状況が改善されるどころか悪化していることが分かる。

金融危機後の投資の世界は基本に戻っている
世界的な金融危機によって、投資の世界ではrBack to basic(基本に戻る)」というトレントが強まっている。08年9月に開催された「LBMA/LPPM京都会議」では金地金保有という最も原始的な手法が改めて見直されていることも報告された。そこでまず最初に、世界の金融市場では何か起こったのか、何か起こりつつあるのかをテーマにしたい。
世界は債券ショックに見舞われている。金融機関同士が疑心暗鬼になっていて、経済にカネが回らない状態だ。銀行間資金融通市場の金利は急騰しており、質への逃避の影響で米国債の利回りは低下して、債券市場が凍りついている。米国を発信源として、欧州をはじめ世界の金融市場で大きな地殻変動が起こっている。
ドル高はドル不安が解消された証ではない
私か強調したいのは、ドル高だからといってドル不安が解消されたわけではないということだ。外為市場ではユーロよりドルの方がマシという弱さ比べでドルが買われている。そのような悪いドルは長続きしない。
サブプライム問題は米国型資本主義の構造的問題を暴き、新たな経済システムもまだ見えてこない。米国経済は根源的不安要因を抱えたままドルが相対評価で買われているのだ。世界の投資家のポートフォリオの多くはドル建てである。このドル保有比率をリバランスして10%程度減らすドル離れの潮流は変わらないと思う。同様に円高も「安全通貨として円か買われる」という後講釈を聞くと日本人としては片腹痛い感じだ。
それから、米ドルの長期的凋落の背景として国際経済の不均衡問題が見逃せない。米国の過剰消費、過小貯蓄は民間、対外部門の赤字体質を生み、ドル不安の種になっている。その米国債を大量に購入して米国の赤字のツケをとりあえず払ってあげているのが中国。こちらは年金不安による過剰貯蓄と過小消費。その結果中国の外貨準備は2兆ドル近くに達し、その分散対象として金も浮上している。
国際経済の不均衡を是正するためには、米国の消費者はクレジットカードを使うことをガマンしなければならない。実際に借金してまで消費をしていた人たちは、クレジットクランチ(信用収縮)により、もうおカネが借りられなくなっている。このことは米国の消費市場が冷え込むことを意味し、中国も日本も影響を被ることになる。
【米国のクレジットリスクの拡大によりのニューヨーク為替市場では、米ドル売りが優勢】米債務上限引き上げ交渉が行き詰る中、米国のデフォルト懸念が広がっていることが背景。この日発表された米住宅指標や米消費関連指標の結果がまちまちとなったことから、市場の反応は限定的。終盤、米債務上限引き上げ問題について目立った進展がないことから、米国債の格下げリスクが意識された。主要通貨に対して米ドル売りが一段と強まり、ユーロ/ドルが1.45ドル台前半へ上昇する一方、ドル円は3月17日以来の安値水準となる77円85銭をつけた。FX投資家は過度な円高に気をつけるべきであろう。